file No.10024:  トラットリア ダ・ブッセ(Trattoria Da Busse)

ポントレモーリで、テスタローリを供する食堂、「トラットリア・ダ・ブッセ」。
4つの小部屋に分かれたダイニングは、各部屋3~6テーブルが設置され、満席で50人ほど。
建物は古いし素っ気無い店内だが、良く掃除され小ぎれいにしている。

例によってメニューは無く、口頭による説明だ。
先代の父親が創めたこの食堂を切り盛りするのは、料理を作りながら朗らかな笑顔が印象的な姉のアントニエッタと、背筋をシャキッと伸ばしキビキビとサービスする妹のイダ。

品切れも有り得るので、「今日、テスタローリ、あります?」と祈るように聞くと、サービスのイダに、「もちろん!テスタローリは我々(郷土)のスペチャリータよ!」とチャキチャキの江戸っ子姐さん風に言われ、ホッと一安心。

創意と工夫を凝らしたお洒落な料理なんて一品も無い。昔から受け継ぐ素朴な郷土料理しか供さない。でもそれでいいと思う。それが食べたくてここまでやって来たのだ。

【①ダ・ブッセの外観】
ダ・ブッセの外観。
うっかりすると見過ごしかねない寂れ方。

【②テスタローリ】
これが本当のテスタローリ。
ココ・ゴローゾでも供しているが、「てろりん」と柔らかく、「ムチッ」としたしなやかさがうまい。
ソースは胡桃とペコリーノチーズを混ぜ込んだバジリコペーストを合わせる。
テスタローリを扱う数少ない他店では、バジリコペーストだけでは顧客の心をキャッチするに弱いと判断してか、色々なバリエーションが創作されてもいる。
しかし、ダ・ブッセでは昔からバジリコペースト以外でテスタローリを食べるなんて考えられないと、創作は頑なに拒絶する(他のソースは?なんて聞くとイダの説教タイムが始まる)。

【③コテキーノ】
豚の皮と脂肪の多い部位の肉を合わせた腸詰の一種。
イタリア全土に見られるが、各地で大きさや風味が微妙に違う。ねっちりとした食感と強いコクが「うま過ぎる!」。

【④アントニエッタとシェフ】
料理を作っているアントニエッタに「今日は本当のテスタローリに会いたくてやって来た」と言うと、ニコニコしながら詳しくいろいろ教えてくれた。
このパスタは料理店で作るものではなく、村からさらに山に入った栗栽培農家で作られるイタリア最古の生パスタで、この農家が収穫した栗を乾燥させる際、栗乾燥小屋で焚かれる熾火を使い焼いたものということだった。
栗農家は生活の糧の一部として、栗と共にテスタローリを町まで売りに来たのが歴史らしい。
だからトスカーナ州に属しているにも係わらず、村から遠いトスカーナの町ではなく、より近いリグーリア州の町、ラ・スペツィアの食料品店で売られていたのだった。
トスカーナ州のフィレンツェで聞いても、テスタローリを知る人は居なかったが、リグーリアの人々が知っていた訳が分った。遠くの親戚より近くの他人といったところかな?
今では農家の後継者が減り、テスタローリは絶滅の恐れがある貴重なパスタとなってしまった。
絶やしてはならない。