file No.03005:  コルテのフェガート・グラッソ・ドカ(フォアグラ)(Fegato Grasso d’Oca di CORTE)

何しろ2千年以上も前の話なので定かではないが、紀元前80年頃実在した古代ローマ人に、マルクス・ガイウス・アピキウスという男がいた。
アピキウスは金持ちの家に生まれ、子供の頃から食に対する執念が凄まじかったらしい。大人になると益々料理に没頭し、するべき仕事もせずに料理の研究に明け暮れた。

そんな彼の考案した料理の中に「イエークル・フィカトゥム」という一品があった。それは、鵞鳥(ガチョウ)に干しイチジクを与え太らせ、肥大したレバーを料理するという代物であり、今で言うフォアグラのことだった。古代ラテン語のフィカトゥムとは、現代イタリア語のフィーコ=イチジクのことで、ガチョウ飼育が語源となって餌のフィカトゥム(イチジク)が生産品のフェガト(レバー)へと変わったらしい。だからフェガート・グラッソ・ドカ(鵞鳥のフォアグラ)生産は、イチジクで飼育するのが本来有るべき姿なのだ。

時代は過ぎ17世紀の北イタリア、ロンバルディア州のミラノ大公ルドヴィコ・スフォルツァは、農業政策の一環としてガチョウ飼育に好ましい環境を整えた。田舎町ロメッリーナ地方のモルタラにはヘブライ人の集落があり、宗教上豚肉を禁じられている彼らは、ガチョウ飼育を喜んで受け入れた。これが今日まで受け継がれ、細々ではあるがロンバルディア州のフェガート・グラッソ・ドカ生産へと繋がっている。

ここ「コルテ・デッ・ロカ」は、モルタラ・チェントロの片隅にフェガート・ドカとガチョウ・サラミ類の店を構え、郊外には飼育場を有しガチョウを放し飼いにしている。素材からすべて自家製、あくまで昔乍らの方法で実直に仕事をしている。

【①フェガート・グラッソ・ドカ】
これが本当の「フェガート・グラッソ・ドカ」。
フランスのフォアグラはガヴァージュという方法で、機械を使い強制的にガチョウの喉にとうもろこしを詰め込み、狭い檻に入れ2週間で太らせるが、コルテではあくまで自然の状態で飼育し、餌は古代ローマ時代と同じように干しイチジクを与え、広い野原に放し飼いにし、ゆっくり3ヶ月以上かけて飼育している。
コルテのフェガート・グラッソは綺麗な薄肌色をし、きめ細かく滑らかで香ばしい香りがする。
「最終的にはどうせ屠殺するのだから同じ事だ」と言う人がいるが、なんて乱暴な物言いなんだろうと思う。
我々は彼らの命を譲って貰い、己が命に代えているのだ。
だから出来るだけ自然の姿を尊重しなければいけないのではないだろうか。

【②フェガート・ドカのパテ】
②③調理したフェガート・ドカのパテとガチョウのサラミ。
フェガート・ドカだけではなく、肉はサラミや生ハム風の製品にも加工されている。
これがなかなかうまいのだ。

【④オーナーのジョアキーノ・パレストロ氏】

根っからの職人、「コルテ・デッ・ロカ」の主、ジョアキーノ・パレストロ氏。受け継がれた伝統を守り、坦々と我が道を歩く。フランス式に大量工業生産すれば大儲け出来るが、彼の情熱は金より仕事の誇りを優先し、絶滅寸前だった元祖イタリアのフェガート・グラッソ・ドカ生産に光を当てた。